こどもに関する支援について
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こどもの支援について考える際に、いくつかの視点があります。ここではソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の視座から考えてみたいと思います。
扱う主題は「こどもの貧困問題」です。こどもの貧困は、その尊厳や将来に甚大な影響を及ぼすものであり、早急に解決すべき重大な課題です。同時に本稿では、こうした危機的状況の裏側で、地域社会に何が資源として生み出されているのかについても考えてみます。
【利用資料】
イチロー・カワチ(監修), 近藤克則(監修) (2013) 『ソーシャル・キャピタルと健康政策:地域で活用するために』 日本評論社.
『家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析(速報版)』公益財団法人 日本財団 家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析(速報版)
認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ関連資料 等 musubie_uneihi_Point_240625.pdf
1. 子どもの育ちを左右する「3つの舞台」と、超えられない経済格差の壁
子どもを取り巻く環境は、主に「家庭」「近隣」「学校」の3つに分けられます。それぞれの領域には、ソーシャル・キャピタル(人々のつながりや信頼関係)や各種の資本が深く関わっています。
家庭(財的・人的資本): 親の経済的余裕(財的資本)が失われると、子どもの健全な成長が阻害され、その悪影響は中年期にまで及びます。また、親の学歴などの人的資本は、子どもが学校システムになじみ、適応していく上でも大きな影響を与えます。
近隣と学校: 近隣のネットワークや学校の組織力は、子どもに良い影響を与え、家庭の不足分を補う(補完し合う)役割を果たします。
しかし、ここには極めてシビアな現実があります。それは、「家庭の経済力(財的資本)だけは、他のソーシャル・キャピタルによる代償がきかない」という点です。家庭の経済基盤が崩れてしまうと、地域のサポートや学校の支援があっても、そのダメージを完全に埋め合わせることは極めて困難になります。
2. こども食堂が直面する「善意の労働」と、地域に芽生える主体性
家庭の経済格差や孤立のセーフティネットとして、いまや全国に広がるのが「こども食堂」です。全国に9,132箇所が存在し、地域の貴重なソーシャル・キャピタルとなっています。
しかし、その経済的実態を数値で見ると、驚くべき構造が浮かび上がります。
会食による地域交流活動の総費用は約73億1千万円ですが、そのうち公的資金の割合はわずか13.4%(約9億8千万円)に過ぎません。残りの大部分は、寄付や個人の持ち出しで賄われています。
多くのスタッフが無償ボランティアとして働き、交通費なども自己負担しています。
この巨大な社会的インフラの価値は、現場スタッフの「無償の善意と労働(シャドウ・ワーク)」によって支えられているのが実態です。
むすびえ等の資料でも指摘されている通り、こどもの貧困という重大な社会課題を、民間のボランティアという不安定な基盤に丸投げしてよいのかという問題性は看過できません。この点に異論の余地はありません。
同時に、地域に出て活動する中で、「こどものために何かしたい」と願い、実際に手を動かす大人が数多く存在するという事実もまた、見逃すことのできない側面です。 こどもの貧困は、本来は公的支援が不可欠な領域です。ただし、その特性上、歩いて通える範囲に存在することや、既存の施設入所などとは異なり、こどもの生活実態に合わせたフレキシブルな対応が求められます。そうした実践の中で、近隣の大人たちの力が、こどもの存在に引き出されるようにして育っているという側面もまた、地域に生み出された貴重なソーシャル・キャピタルです。
民間資源を引き出すために事業計画を練り、必要性をプレゼンテーションし、仲間を集めていく――そうした営みを自ら起こしている人々の存在とエネルギーは、福祉の現場に何を投げかけているのでしょうか。
3. さいごに
日本財団のビッグデータ(大阪府箕面市の子ども成長見守りシステム等)の分析結果から、私たちが押さえるべきポイントは以下の2点に集約されます。
貧困による学力格差は「10歳(小4)」を境に固定化する: 低学年のうちは挽回のチャンスがありますが、年齢とともにその可能性は低下し、低学力が固定化します。
「非認知能力」と生活習慣の格差は、すでに低学年から始まっている: 自制心や生活習慣の差は低学年の段階ですでに現れており、早期の支援が不可欠です。
海外の事例や「子ども第三の居場所」などの実践に見られるように、生活習慣や基礎的信頼感のサポートは、民間支援のネットワークによっても一定の成果をもたらし得ることが示されています。
家族機能の外部化が議論されて久しいですが、こども支援の実践は、単に「不足した機能を補う」という次元にとどまりません。公的責任によるセーフティネットの構築を急務としつつも、地域の大人が子どもと共に育ち直すような、新たな人間関係のあり方(ソーシャル・キャピタル)の創出という視点を踏まえて、これからの支援を構想していく必要があるのではないでしょうか。
