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研究室を見学をしました

プロジェクトタイプ

見学

日付

2025年10月

場所

石巻市

長崎大学医学部 6年 葛島 裕士 さん

2025年9月14日(日)〜9月19日(金)の約1週間、「さとやま、さとうみ地域医療研究室」にて見学をさせていただきました。
見学前、地域医療について、「僻地、都市部を問わず、"地域において必要とされる医療"を提供すること」という理解はありつつも、どちらかといえば「設備や人材などのリソースが限られた地方で、患者との心理的距離が近く、よりあたたかい医療が行われている」という漠然とした印象を持っていました。また、具体的に「その地域で必要とされる医療」とは何で、それを知るための方法についてはわかっていませんでした。
見学を通して、稲刈りやかまどごはん作り、タコの解体・料理、野菜の訪問販売、雄勝総合支所の見学など、地域の生活・産業・行政に触れる体験を行いました。農家や漁師、子どもたちやその保護者、福祉課の方などと交流する中で、地域医療が対象とする年齢層の幅に意外さを感じるとともに、普段の臨床実習の外側にある産業、地域の施設、コミュニティといった非医療資源を知ることができました。
ただ、交流した方たちの患者としての側面や、地域における疾病構造に関して知らない部分が多く、非医療資源が、健康の社会的決定要因(SDH)としてどのように機能しているのかについては、より地域を知り、考えを深める必要があると思いました。
雄勝診療所では、実際に患者さんの社会的バイタルサイン(SVS)を評価する機会がありました。学歴、生活環境、親族関係、今後の生活設計について質問することは、患者さんの患者としての側面以外、すなわち生活者としての多面的な側面を知るきっかけになりました。
しかし一方で、医療者としては、これらを医療的介入に収束させる必要があり、結局のところ「患者」という枠組みに押し込めてしまうのではないかという疑問も生じました。
今回の見学を通して、地域医療は病院や診療所の中だけで完結するものではなく、地域の暮らしや人々との関係性の中に根ざしていることを実感しました。

デイサービス見学では、ある利用者の方が自分の両親のことや、雄勝の産業について生き生きと話す一方で、家庭では制約や孤立があり、日常生活が十分に充実していない現実も知りました。
家庭でのことに関しては、また別の立場からのアプローチが必要かとは思いますが、そのためにも、ある人物を「医療・介護対象」としてのみ捉えず、生活者として理解し、どの出発点からでも、地域資源や社会ネットワークを効率的に活用できる体制を整えておく必要性があると感じました。

平野啓一郎の提唱する『分人』という言葉を借りるのであれば、患者さんは、患者という側面だけでなく、生活者、家族の一員、地域住民、労働者、愛好家といった多様な分人を持っています。同様に、医療者自身も医療者としての分人だけでなく、多様な側面を持っています。
地域医療において重要なのは、こうした双方の分人を想像し、個人を多面的に理解すると同時に、医療資源だけでなく、産業・文化・生活など非医療資源を含めて地域を俯瞰する視座を持つことなのではないかと考えます。今回見学させていただいたように、実際に地域の中に入り込み、見て、聞いて、触れるという体験をすることは、そうした視座を獲得し、「その地域で必要とされる医療」を模索する手段としてとても効果的であると、身をもって学ぶことができました。

(写真は、葛島さんの作品です。)

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